ヴァンピ!
人間は吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるがーー。 吸血鬼は愛する人間に口付けをすると人間になってしまう。 これはそんな世界で紡がれた、少しのお話。 ここは王の住居である古城であり、 『吸血鬼と人間を区別しない』ウェディングホール。 今日はここで吸血鬼の王と人間の結婚式が行われる予定だった。 結婚式場に満ちる期待の中、両開きのドアが盛大に開かれる。 まばらな拍手が場に広がる。 花弁のように広がった拍手はその勢いのまま静かになった。 赤い絨毯の上を歩いてくるのはーー。 不敵に微笑む吸血鬼の王と、彼女に手を引かれる首の無い新婦だった。 吸血鬼の王は傲慢な足取りで新婦を椅子へとエスコートすると、 不敵な笑みを浮かべてこう言った。 「この中に妾の嫁の首を切り落とした狼藉者がおる」 吸血鬼の王の視線が、他の参列客の顔を撫でまわす。 戦慄。蛇が背筋を這うような感覚。 恐怖に肌を泡立たせながら、参列客は互いの顔を見渡すのであった。 --かくして、物語の主客は交代する。 スポットライトは新婦達から客席へと注がれる。 事件の幕が上がる。