凍てついた思念
2019年公開
2017年4月23日、北海道泉別(いずみべつ)市の名門高校「泉別第二高校」は揺れていた。
2年8組の教室に二人の教師が五人の生徒を招集した。
本日、生徒の一人、荒波暁(あらなみさとる)が失踪したというのだ。
監視カメラの映像では、暁は今朝登校し、その後は出ていっていない。
携帯電話の電源が切られているようで、気づいたときには暁とは連絡が取れなくなっていた。
暁は蒸発したかのように学校から消えてしまった。
暁はいったいどこへ?暁の父親であり、2年8組の数学教師でもある荒波武志(あらなみたけし)は絶望していた。
すでにこの世を去っている妻も、失踪して5か月後、根枢川(ねくるるがわ)の水面が溶けるころにようやく発見されたが、そのときにはすでに死体となっていた。運命のいたずらで、ふたたびあのような悲劇が起きようとしているのだろうか。
……生徒たちは二人の教師のために進んで捜査に協力してくれることになった。このとき、各々の心の氷河は徐々に溶け始めていた。
氷塊は川を塞ぎ、氾濫に至らしめるだろう。