七人の山田
2021年11月01日公開
あなたがたはそれぞれ、暗闇の中でひとり、目を覚ましました。──そこに悲鳴が轟きます。
声の主を探して集まった六人の前には、ひとりの浮浪者めいた男があおむけに倒れていました。
どうやら拍動はなく、死んでしまっている様子。
いったい誰がこんなことを……? 訝しむあなたがたの前に、一人の老人がにこやかに現れました。
「いやどーもどーも、主催が遅れて申し訳ありませんな。私、『山田の神』でございます」
『七人の山田』は、マーダーミステリー型のLARPです(※マーダーミステリーではありません)。
LARPとは、自分とは別の人物になりきり、心や体の動きを伴わせて、参加者全員で空想世界への没入を体験する遊びです。ファンタジー風の衣装を着けてTRPG的な物語を体験したり、サバイバルゲームのように戦闘を楽しんだりするものが有名ですが、現代服でホラーものを遊ぶ、テーブルに着いた状態で食事をしながら物語を楽しむ、役職や性格の設定された議論を体験するといったものまで、様々なものがあります。
マーダーミステリーとは、物語の登場人物の一人に扮して起きてしまった事件の真相を探ったり、犯人役となった場合には虚言を弄して逃げ切ることを目指す、会話主体の遊びです。ジャンル名に「マーダー」とついてはいますが、失せ物探しなど日常系の作品も存在しています。また推理モノであるため、一度しか遊べないという特徴があります。
七人の山田はこの両者の中間的な遊びですが、LARPのほうに比重を置いています。全員で登場人物になりきり、キャラクターの心情に寄り添いながら議論や会話を重ね、事件の謎を紐解いていく形となります。アナログゲーム勢に向けた言い方をするなら「協力型のパーティゲーム」というくくりになるかと思います。またマーダーミステリーの「一度しか遊べない」という部分を受け継いでいます。
LARPとしては、全員が着座した状態で行う「卓上LARP」に近い形になります。またノルディックLARP(教育LARP)の要素を組み込んでいます。その中の政治的なLARP(具体的には極度に簡略化したディベート)を行います。
マーダーミステリーとしては、「クローズ型」に近い形になります。特に指示がない限り、全員が設定書にない事柄を語ることができます(便宜上、これを「虚言」と呼びます)。全員が着座している関係上、密談はできません。カードはありますが、チップのようなものはありません。個人ミッション的な努力目標はありますが、これに得点のようなものは付随していません。