あたたかな幽霊
八月三十二日 眩暈がするほど暑い夏の日。 あなたは友人の家を訪ねた。 アパートのインターホンを押すと、歪な音のチャイムが響いた。 友人は出てこない。あなたは扉越しに声をかけた。 時間だけが過ぎ、汗が流れてコンクリートの上に一粒落ちた時、扉が勢いよく開いた。 金属音が響く。用心深く付けられたチェーンロックに、扉の全開は阻まれていた。 扉の隙間から覗く双眸。それはあなたの友人のものだった。 友人はあなたを見ると、少し表情を和らげた。 そう思うほどに、友人の表情は張り詰めているような気がした。 少し様子がおかしい。 あなたが話しかける前に、友人は口を開いた。 「人を殺した」 熱された油に水を零したような、アブラゼミの鳴き声が響く。その中であなたが聞き取れたのはその一言だった。
HO1 死体を隠したい。HO2を愛している。 HO2 人を殺した。HO1を愛している。