継承者-ドン・アドリアーノと蠢く影-
時は1930年。第一次世界大戦によって降ろされた、鬱屈とした夜の帳が明け、アメリカは未曾有の好景気にうかされていた。
目まぐるしい時代だった。ビルはどんどん高くなり、様々な物が産まれ、消費された。そして何より、酒と無法者たちの時代だった。禁酒法の制定は皮肉にも、町を違法酒場で溢れかえらせた。ギャングやマフィアは闇酒ビジネスで大量の資金を手にした。
アメリカは明るかった。酒と無法を燃料に、狂ったように煌々と輝いていて、誰もがその光に群がった。だから、誰も気がつかなかった。背後に広がる暗い闇、その中で蠢くおぞましきものの気配に。
これはシカゴの暗がりに生きた者たちの物語。暗黒街を支配したマフィア「アドリアーノ・ファミリー」。神話に蝕まれた家族の物語。