ノアズアークは還らない
【あらすじ】
『――遥か天空には雲の上に浮かぶ島があり、「天空人(てんくうじん)」と呼ばれる翼を持つ人々が地上とは異なる文明を築いている』
この世界には古くからこんなおとぎ話が語り継がれている。
その伝説を誰よりも信じた男がいた。天才飛行技師レア――彼は自ら設計した飛行船に乗り、遥か天空へと旅立った。船の名は『ノアズアーク号』。かつて大洪水から人類を救った神話の箱舟にあやかり、「人類を再び空へ導く船」という願いを込めたのだ。……しかし、彼はそれきり二度と戻ってこなかった。
それから5年の月日が流れ、誰もがレアの名を忘れた頃。一隻の飛行船が地上から飛び立った。
乗っていたのはレアの息子であり、空島を夢見る少年ペグー。その幼馴染で、無鉄砲なペグーを時に叱り、時に優しく支える少女エミ。そんな彼らの保護者役で、レアの旧友の機械技師のダンチョー。
彼ら3人はレアの生存を、そして空島の存在をこの目で確かめるべく、新たなる飛行船『レアズアーク号』を完成させ、遥か天空へと旅立ったのだ。
そして、荒れ狂う嵐の壁を越え、彼らは空に浮かぶ島へと到着した。空島は本当にあったのだ!
しかし喜びも束の間、着陸の衝撃で飛行船は大破し、帰還の手段を完全に失ってしまった。こうして3人は飛行船の修理が終わるまでの間、空島の集落『スカイラント』で暮らすことになった。
おとぎ話の通り、スカイラントの住人は背中に色とりどりの美しい羽を生やし、自由に空を舞う種族だった。族長のコドルは心優しい人物で、住む場所を提供してくれた。その娘フラミィはペグーやエミと歳も近く、すぐに仲良くなった。機械技師のオオハシと鍛冶屋のハシビロは飛行船の修理を手伝ってくれている。
だが一方で、地上人を快く思わない者もいた。族長の補佐を務める占い師ピトフイはその一人だ。
――そうしてスカイラントでの穏やかで楽しい日々は瞬く間に過ぎ、ついに飛行船の修理が完了。旅立ちの前夜、彼らの前途を祝う夜通しの盛大な宴が催された。
しかしその最中、事件は起こった。族長のコドルが何者かに殺害されたのだ。
族長殺しの容疑者として拘束されたのは、宴の最中に単独行動の時間があった七人。この島では事件が起こった時には、容疑者同士で話し合って犯人を決めるという掟がある。殺人はこの島における最大の禁忌であり、もし犯人に指名されてしまうと、問答無用で「処刑」となってしまう。
こうして翼を持つ者と翼を持たない者たちの、命がけの犯人探しが始まった。