蟻集
2022年01月公開
「如月悠人」。
地方の名家、如月家の婿養子であり、知能・運動神経・容姿・人望・資産など誰もが羨む才能を持っていた。
若き不動産王ともてはやされ、新聞などのメディアにも幾度となく掲載された。
「蓮華館」
山奥にありながらも宿泊客は途切れることなく連日満員御礼の宿泊館。
ただ、それもかつてのこと。
今では、館周辺に咲く花々がかつての栄光を皮肉るようにも見え、より一層物悲しさを放っていた。
ある夜、蓮華館の辺りを、焼けつくさんばかりの炎の音が響いた。幸い、炎は館全体に広まることはなく、ほどなく消火された。被害は一部屋だけで留まったが、その部屋から焼け焦げた一人の遺体が発見された。
その日その部屋を借りていた人物の名は「如月悠人」その人だった。
そこに居合わせたのは7人の男女。
そんな中、1人が口を開いた。
「どうしてこんなことになったのか、真実を確かめたい」
「神は細部に宿る」という言葉に代表されるように、設定、テキスト、小道具全ての細部にいたるまで気を配られているシナリオ。
細かい灰汁を取りつづけ澄み切った日本料理のような、はたまた、ミルフィーユのように小さな工夫を重ねることで作る繊細なスイーツのような、派手ではないが、ジワリと染み入るマーダーミステリー。