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こうださち
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蟻集
「如月悠人」。 地方の名家、如月家の婿養子であり、知能・運動神経・容姿・人望・資産など誰もが羨む才能を持っていた。 若き不動産王ともてはやされ、新聞などのメディアにも幾度となく掲載された。 「蓮華館」 山奥にありながらも宿泊客は途切れることなく連日満員御礼の宿泊館。 ただ、それもかつてのこと。 今では、館周辺に咲く花々がかつての栄光を皮肉るようにも見え、より一層物悲しさを放っていた。 ある夜、蓮華館の辺りを、焼けつくさんばかりの炎の音が響いた。幸い、炎は館全体に広まることはなく、ほどなく消火された。被害は一部屋だけで留まったが、その部屋から焼け焦げた一人の遺体が発見された。 その日その部屋を借りていた人物の名は「如月悠人」その人だった。 そこに居合わせたのは7人の男女。 そんな中、1人が口を開いた。 「どうしてこんなことになったのか、真実を確かめたい」
制作者
蝉散
「斑雪(はだれ)」 カナカナと鳴き声が聞こえる頃、ある小さな村で事件が起きた。 当時村で管理されていたウィルスの拡散により、村にいた全員が死に絶えてしまったのだった。 死亡直前に発生するまだらな発疹から、そのウィルスは、通称「斑雪」と呼ばれ恐れられた。 それから15年の年月が過ぎた。 科学や医療の発展から昔は恐れられていた病も、現在ではそのメカニズムの殆ど解明され、治療法が確立されている。 それはひとえに、未知の出来事に対して危険と隣り合わせとなりながらも、人類のために研究を重ねてきた研究者達の働きがあったからと言っても過言ではない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「附言坂(ふげんざか)研究所」 ここは日本でも点在する細菌や化学物質を主に扱う研究所の1つ。 1階から最上階までは所謂普通の研究所兼製薬会社の体をとっているが、地下には非常に限られた少数精鋭での重要な研究がひっそりと行われている。 部屋の1つ1つが独立しており、高い気密性を保有し、有事の際にも問題が拡大しないような作りとなっている。 厳重に警備システムが組まれ、部外者はおろか虫の侵入も許さない。 また、情報の機密性のレベルも非常に高く、貴重あるいは危険性を伴う研究が日夜行われている。 悪用されれば街や国だけではなく、世界が滅びる、危険なもの。 だが、毒と薬は表裏一体。 世界を救うも滅ぼすもそれを人がどう使うかなのだ。 そう、ここは絶対に存在を知られてはいけない空間。 わずかな情報でも外部に漏らそうものなら翌日にはその人物は姿を消す。 当然、何かを持ちだすことも不可能である。 2030年8月19日 辺りの空気が熱で揺らぎ、蝉しぐれが響き渡る。 季節は夏。灼熱が人々を焦がす頃。 そんな外界とは隔絶した空間。 不気味なくらいに静かで徹底的に管理された空間。 しかし、その均衡は突如けたたましい警告音と共に切り裂かれる。