■ストーリー
三年前、日本のある大学教授が発表した一つの論文が、東南アジアの歴史学界に衝撃を与えた。
これまで断片的にしか知られていなかった古代文字の解読に成功し、紀元前、この地一帯に想定をはるかに超える規模の文明が存在していた可能性を示したのだ。その文明は従来の歴史認識を根底から揺るがすものだった。もしそれが証明されれば教科書は大きく書き換えられる。
現在、その文明の中心地と目される島の田舎の村で発掘調査が進められている。狙いは、かつてこの地を治めた王の墓の発見だ。墓が見つかれば文明の実在は決定的。だが、発掘は順調とは言えなかった。ここ一年、決定的な成果は出ていない。資金も支援も無限ではない。あと1ヶ月でで打ち切られる可能性があるという噂も流れている。それでも今日から大規模な発掘作業が行われる。これまでで最大規模の掘削だ。
参加しているのは、教授とそのプロジェクトメンバー、現地で発掘に関わる村の者たち、そして、夕方にはこのプロジェクトを取材するために日本から一人の雑誌編集者が現地を訪れることになっている。
歴史は誰のものなのか。真実は明らかにされるべきものなのか。この島に眠る真実は、まだ誰の手にも渡っていない。だが今日、その均衡は崩れるかもしれない。掘り起こされるのは石だけとは限らない。