そこにあなたはいた
薄暮の光が差し込むアンティークショップ。古時計が刻む無機質な音が、耳まで響く生々しい鼓動と重なる。こんなにも鼓動が強く響くのは、室内を満たしている血の匂いと、目の前のテーブルに横たわる頭の潰れた死体のせいだろう。その死体から逃げるように走り、ドアノブに手をかける。扉が開かないことに気付くと、途端にドアノブがひんやりと冷たく感じられた。不吉な予感に呼吸が苦しくなる。その時、女性の声が聞こえた。
「安心してください。いずれは、ここから出ることができます。ただ、それまでの間、少しだけお話を聞かせてくださいね」
女性の声は甘く、心地よく、まるで天から地獄に垂らされた一本の糸のように希望をもたらした。だが、鼓動は鳴り止まず警告を伝え続ける。
「この声を信じていいのか?」と。