パンと命
2024年11月公開
天から下ってきたパンを食べる者は、決して死ぬことはない。
わたしは天から下ってきた生きたパンである。
ヨハネによる福音書 6章 50節-51節より
私たちの住まう世界とは少し軸の違うある世界
その世界には、魔法、精霊、亜人、魔族、そして悪魔や天使、神といった存在が身近にあり、人々は様々な脅威と祝福の中で暮らしていた。
そんな世界の中心に、この世界の最大宗派「セリア教」の教徒により建国された「オルセリア王国」がある。商業や学問に秀でたオルセリア国は領土も広く、優秀な人材を輩出する一大国家だが、そんなオルセリア王国の片隅に、人々が貧しく暮らす小さな所領「ルクセリア領」があった。
領主「シャインマン」が収めるルクセリア領は、山岳と沼地の多い地域であり、かつては鉱山の街として栄えた時期もあったが、鉱脈は既に枯渇し、作物も育たず、交易商の通り道にもならないため人の往来も無い限界集落と化している。領民はパンすら口にできず、今日食べるものすらおぼつかない。ろくな仕事もなく、ただただ「生きているだけ」とも言える……しかし、そんなルクセリア領の領民は文句ひとつ言わず働き、不思議と平穏な毎日が繰り返されていた。
領民がなんとか暮らせていたのは、領主であるシャインマンの力が大きいだろう。彼の尽力のお陰でルクセリア領はなんとか保てていた。
しかし、そんなルクセリア領で大きな事件が起こる。シャインマンの死だ。
シャインマンは自室で無惨な死体となって発見された。シャインマンの屋敷に入れるものは限られており容疑者は8人。なぜシャインマンは殺されたのか?なんのために?
犯人とその理由が分からない限り、きっとまた同じことが繰り返される。
領民を守るためにも、早期に決着をつけなければならない……
屋敷にいた容疑者でもある8人は、お互いをけん制しながら事件の真相解明に動くのだった。