業火館殺人事件
2018年公開
紅蓮山(ぐれんざん)には業火館という古寺がある。この辺りは雪牧族(せつぼくぞく)の聖地とされている。
100年以上前、当時は遊牧民族であった雪牧族がここで神秘的な痕跡を発見したという。仏の思し召しに感銘を受けた雪牧族の人々はここに定住し、この聖なる地を代々守ってきた。
雪牧族の祖先は、仏さまが外部の侵入者から一族を守ってくれることを願い、長い年月をかけて業火館を建てた。罪深いものがここへ足を踏み入れると、必ず地獄の業火に身を焼かれてしまうといわれている。
2018年6月、雪。
霊峰・紅蓮山はまたしても白色に覆われた。吹雪に遭い窮地に陥った登山者たちが、示し合わせたかのように業火館の扉を叩いた……。
そして、地獄の門は徐々に開かれる。業火の呪い、謎の館主、すべてを治す霊薬、そして人々の中に隠された秘密……。
謎が一つまた一つと浮かび上がるにつれ、身を焼き魂を焦がす死の炎がふたたび燃え上がっていく。
悪業は火の如く災いし、罪人を焼かんと欲す。万般は去かず、唯だ業がその身に随うのみ。