御来光、午前三時
富士山、八合目。九月のはじめ。閉山まで、あと三日。
その夜の泊まり客は、三人だけでした。
山岳写真家の速水恭一郎(47)。二十五年前、この小屋から見た夜明けを撮った一枚で名を成し、それから毎年、おなじ日にここへ来ています。
来月、二十五年ぶんをまとめた写真集が出ます。速水は、その後書きを書き上げてきました。今夜、三人に読ませるつもりでした。
22時40分、雷雲が八合目にかかりました。登山道は上下とも封鎖。通報はできます。ですが救助隊が動けるのは、夜が明けてからです。
午前3時、速水は撮影台の下、20メートルの岩場で死んでいるのが見つかります。
三脚は倒れていません。台の外周に張ってあるはずの確保ロープが、道具箱に戻っていました。点検票の、その行にだけ、日付が書かれていません。
——御来光は、5時12分。
手がかりが全部「文字」でできているシリーズの 10 作目です。イラストや盤面の読み取りは必要なく、ココフォリア用の素材テキストと GM 用進行シートを同梱しています。
この作品に投票はありません。御来光まで、あと一枚だけ撮れます。三人で話し合って、どのカメラで撮るかを一台に決めます。シャッターを押した人が、6時30分に来る救助隊へ、この夜のことを話す役になります。選んだカメラによって、世に残るものが変わります。
シリーズで唯一、屋外で人が死ぬ作品です。流血や損壊の描写はありません。
単体で完結するので、他の作品を知らなくても遊べます。