時は明治。確実に文明開化の道を歩み始めていた日本。それでも尚、人と人ならざるものの住む世界の境がまだはっきりしていなかった頃のお話。とある華族《大宮家》の娘には「不思議な力がある」とかねてから噂があった。ある時、決まりかけていた彼女の縁談が破棄され、彼女は一人、女当主として立つことになったらしい。街では「その力のせいでは……」と噂が立ったが、誰も真実を知ることはなかった。それから幾月か経った後、ある怪異作家がその噂を耳にした。「良ければ当時のお話、詳しく聞かせていただけませんか?」作家に集められた一同は、虚実ないまぜに話し始める。当時、本当は何が起こっていたのか。真実は何処にあるのか。これは、記憶と選択の物語。