■ストーリー
1920年代のアメリカ。のちに「第一次世界大戦」と呼ばれる、ヨーロッパ全土を巻き込んだ大きな戦いが終わり、世界中が疲弊していた。その中にあって、唯一景気の良いアメリカは、世界の政治と経済とファッションを牽引する存在になっていた。そんな時代のとある冬の日。アメリカのアーカムとインスマスでは、世界の存亡に関わる2つの事件が、ほぼ同時期に発生していた。
【黒の章 -深淵睥睨す冒涜的箱庭- インスマス】
インスマス。金の精錬と漁業で生計を立てている寂れた港町。
ある日、この町の有力者であるブルーム家の高齢の当主が変死体となって発見された。当主殺しの疑いをかけられたのはブルーム家の主治医と、事件当日に町を訪れていた6人のよそ者たち。
インスマスを拠点とするダゴン秘密教団の司祭は、容疑者たちを集め「警察は呼ばない」と前置きしたうえで全員に伝えた。「これから数刻の猶予を与える。この場にいる全員で話し合い、我が同胞を殺した犯人を投票によって特定せよ。最多票を得た者は大いなるクトゥルフ様のいけにえに捧げる」。
魚類か両生類のような顔をした司祭とダゴン教徒に囲まれて逃げ場を失った容疑者たちを、妖しげな輝きを放つ多面体の宝石が、静かに見つめていた。
【赤の章 -黄衣傍聴す背徳的法廷- ミスカトニック大学】
アーカムの名門校ミスカトニック大学にて、文学部の教授が殺された。教授は亡くなる直前、「私を殺した犯人を許さない。必ず復讐する」と誓ってから絶命した。
その願いが宇宙の彼方に届き、教授はくすんだ黄色の衣をまとう「ハスターの司祭」として一時的に蘇った。教授は容疑者たちを集め「犯人はこの手で裁く」と宣言したうえで全員に伝えた。「これから数刻の猶予を与える。この場にいる全員で話し合い、私を殺した犯人を投票によって特定せよ。犯人を言い当てることができたらその犯人に、言い当てることができなければ犯人以外の全ての者に人類が到底耐えられないような宇宙的恐怖を与える」。
恐るべき人外と化した教授と、虚空から現れる「ティンダロスの猟犬」によって封鎖された大学の構内で、死者1名と生者6名による背徳的な裁判が始まろうとしていた。