門前、十七時
門前の町の、いちばん奥。石段を百三十段 上りきったところに、九曜寺があります。
月に一度だけ、この寺は「夕拝観」をやります。本堂の裏の厨子を、日没のあとの一時間だけ開けるのです。
電灯は点けません。灯明の明かりだけです。一日 六名まで。往復はがきの申し込み制。
十一月の終わり。日が落ちたのは十六時三十五分。
十七時に、山門の閂が下りました。
大扉は内側からしか閉まりません。くぐり戸も、落とし錠が内側にしかありません。
つまり、十七時からあと、外から寺に入った人はいません。
十七時四十分。
境内の東、杉の陰の鐘楼。その石段の下に、人が倒れていました。
白衣に、菅笠。動きません。
受付所の帳面には、今日の名前が六つ。そのうち四人は、もう帰ったことになっています。
この寺に残っているのは、あなたたち二人だけです。
プレイヤー 2 名のみ・進行役(GM)不要で遊べる、対立型のマーダーミステリーです。
二人用のマーダーミステリーは、普通「相手が犯人」しか残りません。本作は今日の拝観者を六人にして、そのうち四人を「帰ったこと」にしました。帰った四人にも、機会はありました。そのうえで、犯人を当てても七点のうち三点にしかしていません。「相手が犯人だ」と決め打ちする戦い方では、半分も取れません。
二人とも、自分が見たこと・していたこと・どこにいたかについては嘘をついてかまいません。けれど「手がかり集」に書いてある事実 ── 物の数、物の状態、そこに書かれている時刻 ── これだけは、二人とも嘘をつけません。進行役がいないので、この共通の足場が無いと二人とも何も確かめられないからです。数と時刻は認めたうえで、意味のほうを争う。それがこの作品の戦い方です。
この寺の灯明は十二センチ。二時間で燃え尽きます。つまり十分で一センチ。燃え残りの長さを並べれば、それがそのまま、この夜の記録になります。証言を一つも使わずに出せることが、四つのうち三つあります。
得点は各自 七点 満点。誰が死なせたか(3点)/鐘楼の下の人は誰か(1点)/白衣と菅笠は誰のもので誰が着せたか(1点)/六人目は今日 来たか・六本目の灯明を立てたのは誰か(1点)/相手が「こっそりしたこと」は何か(1点)。点の多いほうが勝ちです。
同梱は PDF 8 本 + ココフォリア用の貼り付けテキスト。進行役がいないので、代わりに三段階のヒント集を入れました。開いても点は下がりません。
・二人 ちょうどが必要です(一人でも三人でも成立しません)
・再プレイはできません(解答編を読むと終わります)
・お寺の予備知識は要りません(作中の言葉はすべて本文で説明しています)
・配信・動画投稿は許可しています(収益化を含む・事前連絡は不要)
【シリーズ】時刻を題名にしたマーダーミステリー シリーズ 14 作の一作です。各作は独立していて、どれから遊んでもかまいません。本作はシリーズで初めての「対立型」の二人用で、ほかの二人用『湯仕舞、午前一時』『写経、午前六時』はどちらも二人とも犯人ではない協力型です。